ファクタリングとは-請求書の買い取りで売掛金を現金化、その注意点 |2021年08月17日
任意整理、民事再生などの債務整理を検討するような、事業の資金繰りに困ったときには、なるべく早くその前に、キャッシュを作る方法がないか検討することも必要です。
また、資金調達や銀行借り入れなどが実施される前のつなぎ資金として、現金が当面必要なこともあるでしょう。
このような場合には、さまざまな助成金や公的支援などのほか、売掛債権を現金化する方法を活用できないか、検討してみましょう。
債権譲渡によって、まだ入金されない売掛金を、早期に現金に換える仕組みをファクタリングといいます。
債権譲渡登記の有無
「債権譲渡登記」とは債権の譲渡を行ったことを証明するために債権譲渡登記所に登記をする法制度のことです。
中には、個人事業でも利用できるサービスや、請求書ばかりか注文書によってキャッシュを早期に得られるサービスもあります。
なぜファクタリング会社や利用者が増えているのか
ファクタリングは、売掛金を通常の入金よりも早く現金化するために、手数料を支払ってでも債権譲渡するという仕組みです。
つまり資金繰りの一種です。当然、銀行からの借り入れの利息よりも、手数料率は高くなります。
このような仕組みで資金調達を必要とする背景には、コロナ禍や、資源・原材料価格の高騰、為替変動などの景気変動などにより、資金繰りに苦労する事業者が多いためです。
また、経済産業省も後押ししていた、売掛債権を利用した資金調達の多様化のため、譲渡制限特約のある債権であっても譲渡が可能となるよう、民法(債権)が改正された背景もあります。
一方で、いわゆる闇金など不法な貸金業者がファクタリングと称して違法な金銭貸付(債権譲渡ではない)を行い摘発されるなど、問題事業者の参入も見られ、金融庁などが警鐘を鳴らしています。
ファクタリングに関する注意喚起 金融庁
違法な貸付(ファクタリング等)や悪質な金融業者にご注意ください! 消費者庁
悪質な金融業者にご注意! 日本貸金業協会
ファクタリングには、2社間契約と、3社間契約とがある
ファクタリングには、自社がファクタリング会社と契約するだけで、売掛債権の相手である取引先には知られることなく、利用できる2社間ファクタリングがあります。
2社間ファクタリングでは、自社が取引先との間で取引を行い、請求書を出した売掛金について、その債権をファクタリング会社に債権譲渡し、その対価として、ファクタリング会社の手数料を差し引いて早期に代金を入金してもらうこととなります。
3社間ファクタリングでは、上記に加え、売掛債権をファクタリング会社に譲渡することを、売掛債権の相手である取引先に了承してもらい、ファクタリング会社から早期に代金を入金してもらい、取引先はファクタリング会社に対し支払いをすることとなります。
2社間ファクタリングのメリットとデメリット
メリット
取引先に、売掛債権の譲渡を知られることなく、対外的に信用を毀損するおそれがありません。
契約が2社間で完結するため、事務手続きが簡単です。
デメリット
ファクタリングの利用手数料が高くなる傾向があります。
3社間ファクタリングのメリットとデメリット
メリット
ファクタリングの利用手数料が低い傾向にあります。
売掛金の回収を自社で行う必要がありません。
デメリット
取引先に売掛債権の譲渡が知られます。
取引先の承諾を得る必要があり、契約などの手続きにもその分の時間がかかることがあります。
ファクタリング利用の注意点
入金サイクルの早期化であること
売掛金を通常の入金サイクルより早く、請求書を発行した段階で譲渡により現金化するということは、それだけ売掛金の回収を早期化しているということになります。
一見、キャッシュフローがよくなるかのようにも思えますが、当然、その分の売掛金は減少し、しかも手数料分の入金金額が減少します。
新たな仕事を行って請求書をさらに発行し、売掛金がまた増えるという事業のサイクルが軌道にのっていなければ、先々の資金繰りがさらに悪化する可能性もあります。
万一、ファクタリングの利用が一時凌ぎにしかならないと判断できる場合には、債務整理や事業譲渡なども含めた検討をした方がよい場合もあります。
手数料分の利益率が減少してしまうこと
一時的に大きな売掛金が発生し、次の仕入れなど事業資金の安定的な確保のため、必要時に限って利用する分には、問題ないことも多くあるとは思います。
しかし、恒常的にファクタリングを利用することになると、毎回、利用手数料を支払うことになりますが、手数料は一般的な金融機関の金利と比較して高くなることは当然です。
仮に、事業の営業利益率が20%であったところに、5%のファクタリング手数料をいつも支払う状況になれば、利益率が15%に減少してしまうことになります。手数料が10%であれば利益は半減します。
「給与ファクタリング」の実体は貸金業?
金融庁・消費者庁などが注意喚起しているように、「給与ファクタリング」などと称して、個人が使用者に対して有する賃金債権を買い取って現金を交付し、その個人を通じて給与債権の回収を行うことは、貸金業に該当します。いわゆる闇金業者などの参入も指摘されています。
しかも、恒常的に利用するようになってしまうと、手数料の支払いがあるために、単に給料を先払いでもらい、しかも手数料分だけ少ない金額となってしまうことになるおそれがあります。
事業者向けファクタリングに関する注意喚起も
ファクタリングと称しているが、契約書に「債権譲渡契約(売買契約)」であることが定められていない、実態は貸金業である悪質業者や違法業者が存在することも注意喚起されています。
また違法ではなくても、ファクタリング業者から受け取る金銭(債権の買取代金)が、債権額に比べて著しく低額であるなど、問題のあるケースには、十分注意してください。
自分はファクタリングを利用しても問題ないのか、利用のポイント
自分利用しても問題ないかどうか
前述したように、ファクタリングを利用しても一時凌ぎにしかならない場合には、利用したその後にはどうなるのかまでを考えて、他の方法も含めた検討をするのがよいでしょう。
たとえば、金融機関からの融資が行われる前のつなぎである、単発の仕事で大きな売掛金がありその原価支払いに必要、新しい仕事や副業を始めたが入金の始まる翌月までは資金繰りが厳しい、といった場合には、先々には問題が解消される見込みがあれば、利用しても問題ないケースが多いかと思います。
利用手数料には注意、計画的な利用を
ファクタリング手数料の相場は、3社間が1%~5%、2社間が10%~20%といわれています。
見積をとるなどして計画的に利用しましょう。
目先のキャッシュが必要な時には便利なものですが、将来の入金を先取りするということでもあります。
事業の利益率が、手数料より低かった場合には、短期的にはともかく、長くは続けられないことも理解したうえで検討することが必要です。
契約内容には注意
債権買取を装った貸金ではないか、あるいは売掛債権の買取であっても、とりっぱぐれた場合に保証を求められる恐れがないかなど、契約内容をチェックし、評判の悪い業者は利用しないこと。
貸金契約またはそれと同等の契約になっていないかどうか
債権譲渡は、譲渡した段階で契約は履行されるもので、返済を求められる貸金ではありません。
ファクタリングと称した貸金ではないかどうか、確認する必要があります。
債権譲渡登記の有無
債権譲渡の登記をする場合には、ファクタリング業者にとっては債権が二重譲渡されるのを防げるため、手数料が低くなることもありますが、2社間ファクタリングであっても取引先に知られる可能性があります。
担保設定や償還請求権の有無
ファクタリング契約では、担保や保証人は必要はないはずですが、契約の内容を確認する必要があります。
償還請求権は、売掛債権の相手の取引先の倒産リスクに関し、ファクタリング会社が利用者に対しリスクを負わせるもので、請求権のない「ノンリコース」のファクタリングが一般的です。償還請求権の条項がないノンリコース契約であるかどうか、確認する必要があります。
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■このページの著者:金原 正道