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2022年度「骨太の方針」-ilc.gr.jp

2022年度「骨太の方針」 |2022年06月08日


2022年6月7日、経済財政運営と改革の基本方針2022が閣議決定されました。

経済財政運営と改革の基本方針2022、いわゆる「骨太の方針」は、内閣府ウェブサイトにて公開されています。

経済財政運営と改革の基本方針2022 外部サイトへ内閣府

第1章「我が国を取り巻く環境変化と日本経済」

国際商品・金融市場を始め世界経済の不確実性が大きく増す中、我が国のマクロ経済運
営については、当面、2段階のアプローチで万全の対応を行うとしています。

コロナ禍からの回復、ウクライナ情勢に伴う原油・原材料、穀物等の国際価格の高騰や、希少物資の供給懸念等を背景に、第1段階では、経済の腰折れを防ぎ、予備費の活用等により予期せぬ財政需要にも迅速に対応することで、国民の安心を確保するとしています。

第2段階として、本基本方針や新しい資本主義に向けたグランドデザインと実行計画をジャンプスタートさせるための総合的な方策を早急に具体化し、実行に移すとしています。

第2章 新しい資本主義に向けた改革

「1.新しい資本主義に向けた重点投資分野」として、下記の5つを重点施策としています。

(1)人への投資と分配
(2)科学技術・イノベーションへの投資
(3)スタートアップ(新規創業)への投資
(4)グリーントランスフォーメーション(GX)への投資
(5)デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資

人への投資と分配

人的資本投資

成長分野における重点投資等を通じた質の高い雇用の拡大を図りつつ、「人への投資」を抜本的に強化するため、2024 年度までの3年間に、一般の方から募集したアイデアを踏まえた、4,000 億円規模の予算を投入する施策パッケージを講じるとしています。

企業統治改革を進め、人的投資が企業の持続的な価値創造の基盤であるとして非財務情報の開示ルールを策定、四半期開示の見直しを行うとし、男女の賃金格差の是正に向けて企業の開示ルールの見直しにも取り組むとしています。

社会全体で学び直し(リカレント教育)による成果の可視化と適切な評価、学び直し成果を活用したキャリアアップや兼業・副業の促進、学ぶ意欲がある人への支援の充実や環境整備、成長分野のニーズに応じたプログラムの開発支援、企業におけるリカレント教育による人材育成の強化等の取組を進めるとしています。

多様な働き方の推進

就業場所・業務の変更の範囲の明示などの労働契約関係の明確化、新卒学生や既卒数年程度の若者の就職・採用方法を産・学と共に検討し、年度内を目途に一定の方向性を得ることとしています。

裁量労働制を含めた労働時間制度の在り方について検討し、事業者がフリーランスと取引する際の契約の明確化を図る法整備、ポストコロナの「新しい日常」に対応したテレワークの促進、多様なキャリア形成を促進する観点から副業・兼業を推進、選択的週休3日制度の導入促進などを進めるとしています。

質の高い教育の実現

デジタル化に対応したイノベーション人材の育成等、大学、高等専門学校、専門学校等の社会の変化への対応を加速し、恒久的な財源も念頭に置きつつ、給付型奨学金と授業料減免を、必要性の高い多子世帯や理工農系の学生等の中間層へ拡大するとしています。
減額返還制度を見直すほか、在学中は授業料を徴収せず卒業後の所得に応じて納付を可能とする新たな制度や、官民共同修学支援プログラムの創設、地方自治体や企業による奨学金返還支援の促進等の環境整備を進めるとしています。

賃上げ・最低賃金

事業再構築・生産性向上に取り組む中小企業へのきめ細やかな支援や取引適正化等に取り組みつつ、景気や物価動向を踏まえ、地域間格差にも配慮しながら、できる限り早期に最低賃金の全国加重平均が 1000 円以上となることを目指すとしています。

「貯蓄から投資」のための「資産所得倍増プラン」

NISA(少額投資非課税制度)の抜本的拡充、高齢者に向けた iDeCo(個人型確定拠出年金)制度の改革、国民の預貯金を資産運用に誘導する新たな仕組みの創設など、政策を総動員し、貯蓄から投資へのシフトを大胆・抜本的に進め、本年末に総合的な「資産所得倍増プラン」を策定するとしています。

科学技術・イノベーションへの投資

研究開発投資を増加する企業に対してのインセンティブ付与、総理官邸に科学技術顧問を設置、小型衛星コンステレーションの構築、ロケットの打上げ能力の強化、日本人の月面着陸等の月・火星探査等の宇宙分野、北極を含む海洋分野の取組の強化、イノベーション創出の拠点である大学の抜本強化などを図るとしています。

スタートアップ(新規創業)への投資

新規上場の際に十分な資金調達を行うためIPOプロセスの見直しを進めるとともに、事業化までに時間を要するスタートアップの成長を図るためのストックオプション等の環境整備を行うとしています。
国内外のベンチャーキャピタルに対する公的資本の有限責任投資等による投資拡大、個人保証や不動産担保に依存しない形の融資への見直し、事業全体を担保とした成長資金の調達を可能とする仕組みづくり等を通じて、成長資金の調達環境を整備するとしています。

成長分野において前人未踏の優れたアイデア・技術を持つ人材に対する支援策の拡充、円滑な労働移動、大学等の研究者と外部経営人材とのマッチング支援、スタートアップの経営を支援する専門家等の相談窓口整備を推進するとしています。

グリーントランスフォーメーション(GX)への投資

今後 10 年間に 150 兆円超の投資を実現するため、成長促進と排出抑制・吸収を共に最大化する効果を持った、「成長志向型カーボンプライシング構想」を具体化し活用するとしています。

同構想においては、150 兆円超の官民の投資を先導するために十分な規模の政府資金を、将来の財源の裏付けをもった「GX経済移行債(仮称)」により先行して調達し、複数年度にわたり予見可能な形で、速やかに投資支援に回していくことと一体で検討していくとしています。

「規制・支援一体型の投資促進策」として、省エネ法などの規制対応、水素・アンモニアなどの新たなエネルギーや脱炭素電源の導入拡大に向け、新たなスキームを具体化させるとしています。

自動車については、2035 年までに新車販売でいわゆる電動車(電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車及びハイブリッド自動車)100%とする目標等に向けて、蓄電池の大規模投資促進等や車両の購入支援、充電・充てんインフラの整備等による集中的な導入を図るとしています。
再生可能エネルギー13については、主力電源として最大限の導入に取り組むための大胆な改革を進めるほか、送配電網・電源への投資14を着実に実施し、水素・アンモニアやカーボンリサイクル、革新原子力、核融合などあらゆる選択肢を追求した研究開発・人材育成・産業基盤強化等を進めるとしています。

これらのGXを実現するため、グリーンイノベーション基金による支援の拡充や、規制改革、国際標準化など、社会システム・インフラ整備に取り組み、グリーンボンド等の環境関連商品が取引されるグリーン国際金融センターの実現を目指すほか、グリーンGDP(仮称)などの研究・整備を進めるとしています。

デジタルトランスフォーメーション(DX)への投資

デジタル改革・規制改革・行政改革を一体的に推進し、今後3年間の集中改革期間において、「デジタル原則に照らした規制の一括見直しプラン」に基づく目視規制や常駐専任規制等の法令等の見直しなどを行い、デジタル原則への適合を目指すとしています。

自動運転車や空飛ぶクルマ、低速・小型の自動配送ロボットの活用を含む物流・人流分野のDXや標準化、MaaSの推進のほか、センサー、ドローン、AI診断、IoT技術、ビッグデータ分析など、あらゆる技術を活用するためのテクノロジーマップを整備し、実装を加速させるとしています。

法人設立時の手続の迅速化・費用軽減を含む規制改革を推進するとしています。

「サイバーセキュリティ戦略」に基づく取組を進め、携帯電話市場における公正な競争環境の整備、準天頂衛星等の更なる整備や地理空間(G空間)情報の高度活用及び衛星データの利活用を図るとしています。

マイナンバーカードの利活用拡大等の国民の利便性を高める取組を推進、市町村における交付体制の強化に向けた支援を行うなど、デジタル庁を中心に、デジタル社会の実現において不可欠なデータ基盤強化を図るため、「包括的データ戦略」に基づき、医療・介護、教育、インフラ、防災に係るデータ・プラットフォームを早期に整備するとしています。

総務省は、AI・RPA等のデジタル技術や自治体マイナポイントの活用など、国の取組と
歩調を合わせた地方自治体におけるデジタル化の取組を推進するとしています。

社会課題の解決に向けた取組

(1)民間による社会的価値の創造
(2)包摂社会の実現
(3)多極化・地域活性化の推進
(4)経済安全保障の徹底

大企業に男女間の賃金格差の開示を義務付けることや、東京一極集中の是正や社会機能の分散など、デジタル田園都市国家構想の実現による地方の活性化を強力に進めるとしています。

第3章 内外の環境変化への対応

国際環境の変化への対応として、
(1)外交・安全保障の強化
(2)経済安全保障の強化
(3)エネルギー安全保障の強化
(4)食料安全保障の強化と農林水産業の持続可能な成長の推進
(5)対外経済連携の促進
を重点課題としています。

特に、国家安全保障戦略などの検討加速、防衛力を5年以内に抜本的強化、スタンド・オフ防衛能力、無人化装備、宇宙・サイバー・電磁波領域を含む領域横断能力の強化、AI、無人機、量子などの先端技術の研究開発など進めるとしています。

半導体、レアアースを含む重要鉱物、電池、医薬品などの重要物資について支援措置を整備し、安定供給を確保、内閣府に経済安全保障推進室(仮称)を設置するとしています。

防災・減災、国土強靱化の推進、東日本大震災等からの復興、国民生活の安全・安心を進めるとしています。

第4章 中長期の経済財政運営

1. 中長期の視点に立った持続可能な経済財政運営
2. 持続可能な社会保障制度の構築
3. 生産性を高め経済社会を支える社会資本整備
4. 国と地方の新たな役割分担
5. 経済社会の活力を支える教育・研究活動の推進

当面の経済財政運営と令和5年度予算編成に向けた考え方

財政健全化の「旗」を下ろさず、これまでの財政健全化目標に取り組むとする一方、経済あっての財政で現行の目標年度により、状況に応じたマクロ経済政策の選択肢がゆがめられてはならないとして、政策の長期的方向性や予見可能性を高めるよう、単年度主義の弊害を是正し、国家課題に計画的に取り組むとしています。

令和5年度予算編成に向けた考え方として、情勢認識を踏まえ、景気の下振れリスクにしっかり対応し、民需中心の景気回復を着実に実現することで、成長と分配の好循環に向けた動きを確かなものとしていくとしています。

「人への投資」、「科学技術・イノベーションへの投資」、「スタートアップへの投資」、「GXへの投資」、「DXへの投資」の分野について、計画的で大胆な重点投資を官民連携の下で推進し、歳出について、累次の補正予算の使い道や成果を見える化するとともに、効果的・効率的な支出(ワイズスペンディング)を徹底するとしています。


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■このページの著者:金原 正道

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