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アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書(消費者庁) |2022年06月19日

消費者庁は、これまで検討を重ねてきたインターネット上の成果報酬型広告、いわゆるアフィリエイト広告について、広告主の責任を明確にする方向で検討会の報告書を出しました。
アフィリエイト広告を使ってウェブサイトやブログを運営するメディア運営者への規制は慎重に考える一方、悪質な広告主等については景品表示法その他の法律や方策を使って厳正に対応する方向性を打ち出しています。


関連サイト:

アフィリエイト広告等に関する検討会 外部サイトへ消費者庁
アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書-2022年02月15日[PDF] 外部サイトへ消費者庁

アフィリエイト広告等に関する検討会 報告書のポイント

報告書のポイントは、以下の通りとなっています。

現状認識

インターネット上の広告手法の多様化・高度化等に伴い、広告主によるアフィリエイトプログラムを利用した成果報酬型の広告は、市場規模が2019 年度には約 3100 億円であったものが、2024 年度には約 5000 億円へと増大していくことが予測されています。

アフィリエイト広告の特徴としては、アフィリエイターにより、広告主が思いつかないような新しいアイデアや消費者目線での広告が行われ、効率的な広告配信や需要喚起への効果も期待されるという、プラスの側面も、報告書では認識しています。
初期費用が少なくて済むことから、広告に多額の初期投資をできない中小事業者やスタートアップ事業者等も利用することができ、これらの事業者の多様な商品等が消費者に普及するきっかけにもなりうるという点にも言及しています。

一方、負の側面としては、アフィリエイト広告においては、一般的に広告主ではないアフィリエイターが表示物を作成・掲載するため、広告主による表示物の管理が行き届きにくいという特性や、アフィリエイターが成果報酬を求めて虚偽誇大広告を行うインセンティブが働きやすく、不当な表示が行われるおそれがあるとしています。

令和3年3月には、アフィリエイトプログラムを用いた不当表示に対し、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)に基づく措置命令も行われるなど、アフィリエイトプログラムを用いた広告表示に対しては、景品表示法による厳正な執行が求められている状況にあるとの認識です。

現状での規制法

アフィリエイト広告が消費者に届くまでには、広告主・広告代理店のほか、ASP(アフィリエイト・サービス・プロバイダー)、アフィリエイター、媒体社(デジタル・プラットフォーム提供者)・アドネットワーク事業者といった広告主以外の事業者が関係しています。

現状でのアフィリエイト広告に対する法規制は、下記の法令等によって行われています。

金融
・金融商品取引法
・景品表示法
・業界団体の自主規制等

健康食品・化粧品
・薬機法
・健康増進法
・景品表示法
・特定商取引法等

美容エステ
・医療法
・景品表示法
・業界団体の自主規制等

その他業種
景表法

検討会報告書による提言

アフィリエイト広告等に関する検討会は6回にわたって開催され、アフィリエイト広告の適正な表示を実現する観点から論点整理を行い、各論点について提言を行っています。

論点整理・提言では、実態を踏まえ、
1 アフィリエイト広告に対する景品表示法の適用に係る基本的な考え方等
2 悪質な事業者への対応
3 不当表示の未然防止策(景品表示法第 26 条に基づく事業者が講ずべき表示の管理上の措置)

の三つの論点を整理しており、整理を踏まえた提言のポイントは、下記の通りとなっています。

1 アフィリエイト広告に対する景品表示法の適用に係る基本的な考え方等

アフィリエイト広告は、景品表示法上は広告主の表示とされるものであることの周知徹底

アフィリエイト広告の表示内容については、ASPやアフィリエイターにも一定の責任はあると考えられるものの、まずは「表示内容の決定に関与した事業者」とされる広告主が責任を負うべき主体であるとしています。

不当表示のおそれのあるアフィリエイト広告について、広告内容はあくまでアフィリエイターが作成したものであっても、広告主による広告である以上、アフィリエイト広告の表示内容についてはまずは広告主が責任を負うべき主体であるということを、広告主等の事業者側及び国民生活センターや日本広告審査機構等の問題表示を指摘する側の双方に加え、消費者にも広く周知徹底していくことが必要であるとしています。

このため、効果的な周知徹底のためにも、アフィリエイト広告を用いた不当表示に対して、景品表示法に基づき、厳正な対処を行うことが重要であると結論づけています。

広告主以外の事業者等について

業界団体に所属しない販売業者・ASP・アフィリエイターが一体となって、虚偽誇大なアフィリエイト広告を繰り返すケースが少なくないとの問題認識を示す一方、アフィリエイト広告そのものが問題のある広告手法ではないところ、ASPやアフィリエイターに対しても、広告主と同様の規制対象とすることは、多くの誠実な事業者に対する萎縮効果を招き、問題となるアフィリエイト広告の排除という目的を超えて、アフィリエイト広告市場全体の縮小を招く可能性もあるとしています。

特に、アフィリエイト広告は、アフィリエイターが創意工夫をして消費者目線で体験談等を記載しており、また、事業者にとっては少ない費用で広告ができるメリットがあるなど、消費者や事業者にとって重要な広告宣伝手段であることなどを踏まえると、消費者利益につながる面も有するアフィリエイト広告の市場自体の縮小につながりかねない規制強化については、慎重に考える必要があるとしています 。

2 悪質な事業者への対応

悪質な事業者が行う虚偽・誇大なアフィリエイト広告に対しては、景品表示法に基づく厳正な法執行が必要となるとした上で、悪質な事業者への十分な対応を行うためにも、下記のとおり、他の法律との連携等も必要であるとしています。

(1)特定商取引法との連携

事業者が、広告主と連携共同して通信販売を行い、一体となって事業活動を行っていると認められる場合には、ASPやアフィリエイターなどの事業者についても景品表示法上の供給主体と認めて景品表示法を適用することが必要であるとしています。

さらにこれらの会社において、問題となる広告について実質的な指示役を担っていた個人に対し、広告業務禁止命令を行うことも視野に入れ、これらの会社に対する特定商取引法の適用を行うことが必要であるとしています。
景品表示法は広告主を規制対象とする一方、特定商取引法は、個人を規制対象とすることもできるため、問題のある表示について、両法律による適切かつ有効な法執行が必要であると結論づけています。

(2)健康増進法及び薬機法との連携

不当なアフィリエイト広告の多くが健康食品と化粧品に集中していることを踏まえ、不当な表示を繰り返すASPやアフィリエイターに対する措置を視野に入れ、健康増進法や薬機法を柔軟に活用し、虚偽・誇大表示の執行を強化すべきであるとしています。

(3)その他

行政庁が悪質なアフィリエイト広告に対処していく上で、警察などとも適切な連携を図る必要があることや、消費者安全法に基づき、消費者被害の発生・拡大の防止に資する情報を公表し、消費者に注意喚起することも視野に入れています。

3 不当表示の未然防止策(景品表示法第 26 条に基づく措置)

検討会においては、報酬の形態として成果報酬である商品・サービス購入型や、クリック型と呼ばれるアフィリエイト広告に特に焦点を当てて、広告主が管理上の措置を講ずることが必要であるこの範囲を対象とし、考え方を明示することが必要であるとしています。

具体的には、広告主は、自らのアフィリエイト広告の表示について、不当な表示が行われないような広告内容となるよう、アフィリエイターとの間の契約においてその旨明確に取決めを行うとともに、アフィリエイト広告の出稿前や出稿後に、表示内容の確認を行うなどの管理上の措置を講ずることが考えられるとしています。

また、表示等の根拠となる情報を事後的に確認するために必要な措置として、対象となる商品又はサービスが一般消費者に供給され得ると合理的に考えられる期間、事後的に確認するために、たとえば資料の保管などの必要な措置を採ることが重要であるとしています。

さらに、不当表示の未然防止に必要十分なパトロールを行うことや、売上の大きいアフィリエイターを重点的にチェックすることも考えられるほか、提携しているアフィリエイター自身にアフィリエイト広告の表示等の根拠となる情報を保管してもらうといったことも考えられ、これらを契約内容として、明確に取り決めておくことが考えられるとしています。

アフィリエイト広告について、表示等に関する事項を適正に管理するため、表示等を管理する担当者や担当部門をあらかじめ定めることが重要であるとしています。

表示等管理担当者となる者が、景品表示法に関する一定の知識などの習得に努めていることは重要であり、特定の業種に限定されることなく、広告主の社内においてアフィリエイト広告に従事する担当者及びアフィリエイターに対して、業界団体・ASP・広告代理店が実施するものを含め、景品表示法の専門家等による定期的な研修の実施をする必要があるとしています。

特定の商品またはサービスの表示において、景品表示法違反又はそのおそれがある事案が発生した場合には、事実関係の迅速かつ正確な確契約事項等について業界の標準的な基準となる様式を整理・検討すること、消費者からの苦情の受入れ・対応体制の構築が必要であるとしています。

問題があるアフィリエイト広告の是正・削除及び委託契約解除として、ASP等を介したアフィリエイターとの間の契約において、アフィリエイト広告における「広告」である旨の表示、契約違反をした場合は債務不履行として提携を解除する、報酬の支払い停止、既に支払った報酬を返還させるなどを行うといった内容をあらかじめ規定することが必要であるとしています。

広告主がアフィリエイト広告による宣伝活動を行う場合には、当該アフィリエイト広告において、消費者が広告主との関係性を理解できるよう、広告である旨を認識できるような文言や形(表現、文字の大きさ、色、掲載場所等)で、当該広告主の広告である旨を明記するといった措置を講ずべきであるとしています。

今後の対応

現状では、広告主が責任をもってアフィリエイト広告を管理することにより、景品表示法の不当表示となるようなアフィリエイト広告を防止できるとの理由から、景品表示法の改正は現時点では不要であるとしています。

しかし、アフィリエイターが問題のある表示を行うなどの問題行為が多数生じた場合など、広告主が責任をもってアフィリエイト広告を管理したとしても不当表示をなくすことができない場合には、景品表示法を改正して、供給主体または責任主体の位置付けの見直し等を検討すべきであるとしています。

今後、消費者庁においては、今回の報告書を踏まえ、所管する法令(景品表示法、特定商取引法、健康増進法等)を適正に執行することで、問題となる表示を是正させるべきであると結論づけています。


■このページの著者:金原 正道

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