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インターネット弁護士協議会の時代-ilc.gr.jp

インターネット弁護士協議会の時代 |2019年05月22日


はじめにおことわりしておきますが、現在の当サイトilc.gr.jpと、1996年に設立され、2017年5月までサイト運営がされていたインターネット法律協議会(旧・インターネット弁護士協議会)とは、関連がありません。

当サイトilc.gr.jpは、弁護士、弁理士をはじめとする士業に関する公式情報、主として士業のインターネット利用についての情報や、ウェブサイトを含む広告についての情報を発信するものです。

とはいえ、筆者は弁理士(弁理士試験合格前の期間を含む)として1997年当時に特許法律事務所に勤務し、インターネット弁護士協議会の代表を務めておられた牧野二郎弁護士の知己を得て、以来おつきあいをいただいていること、その後に弁理士として独立しインターネットを活用していること、独立した2000年頃には一時、インターネット弁護士協議会の賛助会員でもあったこと。

これらのことから、あの時代の空気を知るものとして、ilc.gr.jpドメインを使用して、当サイトを運営するに至った思いを記しておきたいと思います。
ちなみに、賛助会員であったインターネット弁護士協議会では、メーリングリストの大量のメールが届くだけだったので、何もしないままにやめてしまいました。


インターネット弁護士協議会、後に改称してインターネット法律協議会のことについて、調べてみると意外にも、書き遺された記録が少ないことに気づきます。

マルチメディア・インターネット事典の「インターネット弁護士協議会 Internet Lawyers Conference/ILC」の項目に、ある程度の記述がされています。

「インターネットを利用して、弁護士による市民への法律情報の提供を促進し、市民の必要とする法律情報が、日本中至る所で利用できる環境の確立と、市民にとって必要とされる弁護士の確保を目的として、1996年9月30日に設立された協議会の名称。会員は、弁護士はもとより、法律関係の専門職の方をはじめ、法律に関心のある市民の方も自由に参加できる。会則づくりから、会の発足、運営、さらには法律とインターネットの関係を問うシンポジウムの開催など、すべてをインターネットを利用して進めている。また、インターネット弁護士協議会の情報は、すべてホームページで公開され、入退会自由の組織である。しかし、いいかげんな弁護をするような弁護士を排除し、弁護士全体の信用を守るため、弁護士は電話帳広告、同窓会誌以外に広告を出してはならないという規定があり、設立にあったて弁護士会内で『宣伝ではないか』『無料相談は報酬規定違反だ』として、懲罰を求める声も出たという。
(中略)
最近では多くの弁護士がテレビのワイドショウなどに登場し、多くの意見を発言している。テレビに登場する弁護士は知名度が高くなり、仕事の依頼が多くなっている。しかし、本来の弁護士としての仕事がテレビ出演の時間に削られ、良い弁護ができるのかという不安も残る。」
「マルチメディア・インターネット辞典」Dictionary of MultiMedia

上記引用はインターネット弁護士協議会の見解ではなく、マルチメディア・インターネット事典編纂者である伊藤政行の論であるが、インターネットには功罪があるというのは、当時からの牧野二郎弁護士の見解でもありました。


牧野先生ご自身の言葉としては、下記の対談記事が残されています。

「弁護士のホームページが大変少なかったというのが当時の僕らの思いで、何人かの弁護士とメールで接触し始めたのです。ただ、何人かの先生はたいへん警戒されていましたが。」

「自分たちの意見なり考え方なり、それぞれの分野で法律相談を行ったり、いろいろなことをしたほうがいいんじゃないかということで、ベースになるインフラのようなものは共有できないか、ということを考えながら、とにかく連絡し合おう、弁護士のスキルを少し上げようということが、最初の思いだったんですね。」

特集「21 世紀の法制度」第3 回/対談
「情報社会と法曹界
ネット社会における弁護士のあり方」
牧野二郎(弁護士)
林紘一郎(GLOCOM特別研究員・慶應義塾大学教授)GLOCOM
月報「智場」No. 64 2001年4月 国際大学グローバル・コミュニケーション・センター
http://www.glocom.ac.jp/project/chijo/2001_04/2001_04_02.pdf(PDF)
http://www.glocom.ac.jp/column/2001/04/post_319.html


中古ソフト問題や、インターネット上での誹謗中傷書き込み事件など、デジタル時代の著作権問題や、その他の法律問題が相次いで起きる中でも、インターネットの功罪の「功」の部分に光を当て、希望を見出していた時代の空気がありました。

牧野二郎先生の経歴を見ると、
「1995年インターネットに接続、1996年1月からホームページ「INTERNET LAWYER 法律相談室」開設。9月30日インターネット弁護士協議会(INTERNET LAWYERS CONFERENCE)結成、同 代表(2002年2月15日まで)。」
https://www.ddtf.jp/ddtf2/02sympo/makino.htm
とあります。
インターネット・ローヤー法律相談室
「インターネットで法律相談ができる本」(中経出版 1997年2月)、 「市民力としてのインターネット」(岩波書店 1998年6月)などの著作もありました。


弁理士試験の勉強から解放された筆者が、最初にWEBサイトを制作し公開したのが1999年1月。
当時は弁護士や弁理士のWEBサイトも少なく、あっても表紙だけ、あるいは経歴や業務内容、挨拶などの数ページのものがほとんどでした。

筆者は弁理士試験の勉強で得た内容をもとに、niftyホームページにて特許、意匠、商標、著作権などのページを公開し、2000年に独立するときのWEBサイトの原型となりました。
やがてWEBサイトを独自ドメインに移行し、コンテンツの更新・サイト運営をサーバーに設置したBLOGソフトで行うようになってからも、コンテンツの多くもそのまま移行しています。
思えば、筆者が独立開業できたのも、インターネットの「功」のおかげでもありました。


筆者が運営するWEBサイトを、サーバーインストール型のBLOGソフトに全面移行したのが、2004年3月ですが、その前年から試行錯誤して研究していました。
当時WORD PRESSと人気を二分していたのが、2003年に設立されたシックス・アパート社日本法人のMovabkeTypeでした。
筆者は、MovableType2.6や、blosxomというサーバーインストール型ソフトを試用してみましたが、blosxomなどはテキストファイルをFTPでアップロードするのがBLOG投稿であったという、今では考えられないものでした。

シックス・アパート株式会社について シックス・アパート株式会社
blosxom wikipedia

当時はまだ、BLOGはweblogといっていましたが、一般人がメディアを持てる、自由に発信ができるという希望に見え、先進的な空気がありましたし、ソフトウエアをいじったり、他の人のブログを参考にしたりするのも楽しいものでした。


筆者のいる弁理士業界は、弁護士と同程度に、品位保持や倫理に厳しい士業であると、当時考えていました。
実際、他の一部の士業の間では、少々品位に欠けるインターネット広告が横行していたり、弁護士法72条問題が起きたりするようなことがありました。
弁理士はそうした問題とは無縁と思っていました。弁護士も弁理士も、料金は自由化となり、広告規制も大幅に緩和されましたが、それが問題になるとは思いませんでした。

しかしリーマンショック前後の頃には、弁理士の間でも、少々品位に欠ける広告や、過剰な宣伝が目立つようになりました。あまりにも問題視されるべきものについて、筆者は監督機関に対応を求めたこともあります。
背景として、司法制度改革という名のもとでの弁理士の大幅増員と、景気悪化によるの特許事務所への就職難がありました。

具体的に書けませんが、これが10年以上にわたり、公正取引委員会にでも遠慮しているのか、碌な監督もされずに放置されていることこそが問題視されるべきものと、筆者は考えます。
インターネットの検索をしてみても、むしろきちんとした仕事をされている事務所は出てきません。
弁護士でさえ、景品表示法の関連で消費者庁に問題を指摘された事例がありました。


1999年1月に筆者がWEBサイトを公開し、ほどなくYahoo!JAPANから、ディレクトリに掲載する許可を求める連絡をもらいました。
Yahooがディレクトリを制作していることや、相手から連絡してきたこと、リンクに許可を求めることなど、今では考えられないことでした。

しかし、その後にディレクトリ検索は下火となってロボット検索が主流となり、Yahoo!JAPANがgoogleのエンジンを採用し、2018年にはYahooディレクトリが終了となりました。
google社は、
「Google の使命は、世界中の情報を整理し、世界中の人がアクセスできて使えるようにすることです。」として、
その言葉を10年以上前の筆者なら、希望を持って素直に受け入れましたが、日々進歩をし続ける検索エンジンとはいいながらも、中身のないサイトや、有害でさえあるサイトが検索結果に出てくるなど、いたちごっこの状況を見ていると、一社寡占の問題も意識せざるをえません。


筆者がilc.gr.jpのドメインが空いていることを知ったのはたまたまですが、インターネット最初期の有名サイトが運営を終えたり、そうしたドメインが空いているだけならまだしも、怪しげな匿名のアフィリエイトサイトになっていたりするのを、最近いくつも発見しました。
ilc.gr.jpドメインも、筆者が取得しなければいずれそうなっていたであろうと思います。

私見ですが、ある分野・業界で、一定程度の実績なり知名度なり功績なりのあったドメインを、業界団体など有志グループでプールする仕組み、あるいはドメインを手放す時に預けられるような仕組みがあってもよいのではないでしょうか。


ともあれ、筆者の肌感覚でいえば、インターネットの事件や著作権の問題が生じながらも希望に満ちて見えたインターネット初期が、ネットの功罪や、インターネットを利用する士業のあり方が問われた第1期。
インターネットが当たり前のツールとして普及し、ネット上のページ数がゴミのようなサイトを含め膨大なものとなり、弁理士さえもが巻き込まれていった10年前頃が、第2期。

とすれば、広告の品位低下や価格競争も、もはや行き着くところまで来た現在が、ネットの功罪や、インターネットを利用する士業のあり方が問われた第3期。
筆者の認識はこのようなものです。

google社が検索エンジンの制度をより高めようと日々努力を重ねていることは認めます。
しかし、内容の内品質の低いページや、フェイクニュースを排除する目的ではありながら、検索結果には権威性を重視する、通説と異なる意見の取り扱いについては、寡占化した巨大検索エンジンにより正当な少数意見が排除されるおそれはないのかといった懸念を抱かないでもありません。


以上がここまでの経緯となります。

2019年11月22日



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■このページの著者:金原 正道

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