企業法務の仕事 |2020年10月29日
企業法務にはさまざまな業務があり、大企業では法務部が主たる業務を担当するほか、分野によっては経営管理部、コンプライアンス部、知的財産部、IR部署や消費者対応部署などが対応にあたります。
また大企業の多くでは、顧問弁護士を置いています。
顧問弁護士は、企業法務について恒常的に相談、助言、指導、社内規則や契約書チェック等を行う、法律事務所の仕事です。
弁護士以外の法律隣接職種としては、司法書士、行政書士、弁理士、税理士、公認会計士、社会保険労務士などが知られており、関連業務について企業の相談や依頼に応じて業務を行います。
税理士や社会保険労務士についても、企業が顧問として恒常的に依頼することの多い士業です。
中小企業、スタートアップなどでは法務部を設け、顧問弁護士を依頼することは難しい場合もあります。
その場合でも法務担当者を置いて、いつでも相談できる弁護士や、法律隣接職種を見つけておくことが有効です。
法務部の仕事内容
法務部が企業内において日常的に行う業務には、次のものがあります。
法律相談
企業内各部署に関係する法律、法的事項について、法務担当者や、必要があれば弁護士や関連士業に相談を行う業務です。
事業活動において法的に疑義が生じたり、対応方法や取引に法的な不安がある場合、確認を必要とする場合には、あらかじめ相談することが必要です。
法令調査
事業活動において法的な確認や調査が必要な場合には、調査を行います。
法改正によって新たな規制や、行政の政策変更、税制の変更などがあり、事業を遂行するうえで対応が必要な場面では、特に調査を行い、必要があれば周知することが重要です。
人事・労務関連業務
従業員の入社から退職までの間には、就業規則や雇用契約、給与支払い、社会保険などの各種手続き等の、法的事項が発生します。
社内規則や契約関連も、人事担当部署と法務関連部署が連携して、体制を整備しておかなければなりません。
経営管理法務
取締役、社外役員、監査役、取締役会や株主総会などの経営管理面でも、法的な規約・契約等の整備、法的チェック、コーポレートガバナンス体制の整備が必要です。
コンプライアンス対応
暴対法、暴排条例、組織犯罪処罰法、犯罪収益移転防止法などの法令が整備され、企業のコンプライアンス対応は必須のものとなっています。
取引先や従業員のコンプライアンスチェック、不祥事が起きたときに対応は企業に欠かせない業務です。
契約法務
取引においては物品販売、サービス利用約款、業務委託、事業・資産譲渡、業務提携、共同開発などのさまざまな契約が発生します。
社内の業務管理においても、雇用契約、就業規則、委任契約などの契約や規約があります。
契約書のチェック、規約の策定や改訂なども、法務部の重要な業務です。
人事・労務管理
雇用契約や労働問題、社内の人間関係の問題などを法的観点から助言、指導等する業務です。
債権回収・債権管理
売掛金などの債権回収、債権管理などは、企業の経営に直結する恒常的に発生する業務です。
紛争(訴訟)対応
取引先や消費者、ときには従業員との間で紛争が生じることもあります。
弁護士などにも相談しつつ、交渉、訴訟、仲裁などの紛争解決を行います。
M&A・組織再編・新設等
企業の合併・分割・事業譲渡や、子会社・合弁会社の新設など、事業や組織に関わる契約、デュー・デリジェンス、手続きを行う業務です。
出資・業務提携、ライセンス契約、販売店契約等においては、独占禁止法や下請法などの分野の検討、対応も行います。
行政法の分野の対応
事業の許認可の取得・更新や、各種の届け出など、事業に必要な手続きを行う業務です。
消費者法の分野の対応
消費者契約法、特定商取引法、景品表示法などの、消費者との間で生じる法的問題を処理し、紛争を予防し、対応する業務です。
広告表記・製品表示等の分野の対応
薬事法・食品衛生法・JAS法・景品表示法などの各種規制に関し、広告表記や製品・パッケージ等の表示についてチェックし、検討・助言を行う業務です。
製造物責任の分野の対応
医療機器、医薬品、精密機械、自動車、食品その他の製造物責任およびリコール問題についての対応や、製品の第三者機関による検査、認証などについて、助言、検討、交渉等を行う業務です。
知的財産権の分野の対応
特許、商標などの知的財産について、権利の取得、助言、調査などを行う業務です。
外為法・国際法の分野の対応
海外企業への出資・ライセンス契約・販売店契約や、海外企業との業務提携、海外進出や子会社・支店の設立等において、外為法や国際法などの関連法令に関する助言・書類作成、検討、弁護士と連携した対応などを行う業務です。
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■このページの著者:金原 正道