加工した写真をプロフィール画像に使用し著作者人格権の侵害とされた事例 |2020年01月12日
事件種別 侵害訴訟等控訴事件
権利種別 著作権
事件種類 損害賠償
発明等の名称等 写真
事件番号 令和1(ネ)10048
部名 4部
裁判年月日 令和元年12月26日
判決結果 原判決変更
原審裁判所名 東京地方裁判所
原審事件番号 平成30(ワ)32055
当事者
一審原告:X
一審被告:Y
主な争点 損害額(3項),複製,公衆送信権(送信可能化を含む)
全文(PDF)
事案の要旨
本件は,1審原告が,1審被告が1審原告の著作物である別紙写真目録記載の写真(以下「本件写真」という。)の画像データを一部改変の上,オンライン・カラオケサービスのアカウントの自己のプロフィール画像等としてアップロードした行為が1審原告の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害行為に当たる旨主張して,1審被告に対し,著作権侵害及び著作者人格権侵害の不法行為に基づく損害賠償として,168万9848円及びうち84万4924円に対する平成28年1月7日から,うち84万4924円に対する同年2月18日から各支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めた事案である。
原判決は,1審被告に対し,71万2226円及びこれに対する同日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払を命じる限度で1審原告の請求を認容し,その余の請求を棄却した。
原判決に対して,1審原告は,1審原告の敗訴部分のうち,76万6000円及びこれに対する遅延損害金の支払請求を棄却した部分を不服として控訴を提起し,1審被告は,1審被告の敗訴部分全部を不服として控訴を提起した。
主 文
1 1審被告の控訴に基づき,原判決を次のとおり変更する。
2 1審被告は,1審原告に対し,58万2226円及びうち29万1113円に対する平成28年1月7日から,うち29万1113円に対する同年2月18日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3 1審原告のその余の請求を棄却する。
4 1審原告の控訴を棄却する。
5 訴訟費用は,第1,2審を通じてこれを3分し,その2を1審原告の負担とし,その余を1審被告の負担とする。
6 この判決の第2項は,仮に執行することができる。
第4 当裁判所の判断
2 争点1(本件写真の著作権(複製権及び公衆送信権)及び著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)の侵害の成否)について
次のとおり訂正するほか,原判決の「事実及び理由」の第4の2記載のとおりであるから,これを引用する。
(1) 原判決14頁23行目から15頁11行目までを次のとおり改める。
「(1) 著作物の複製(著作権法21条,2条1項15号)とは,著作物に依拠して,その表現上の本質的な特徴を直接感得することのできるものを有形的に再製する行為をいい,著作物の全部ではなく,その一部を有形的に再製する場合であっても,当該部分に創作的な表現が含まれており,独立した著作物性が認められるのであれば,複製に該当するものと解される。
前記1(1)の認定事実によれば,本件写真(別紙写真目録記載の写真)は,1審原告が2羽のペンギンが前後(写真上は左右)に並んで歩いている様子を構図,陰影,画角及び焦点位置等に工夫を凝らし,シャッターチャンスを捉えて撮影したものであり,1審原告の個性が表現されているものと認められるから,創作性があり,1審原告を著作者とする写真の著作物(同法10条1項8号)に当たるものと認められる。
また,本件写真の2羽のペンギンのうち,右側のペンギンのみを被写体とする部分は,著作物である本件写真の一部であるが,当該部分にも構図,陰影,画角及び焦点位置等の点において,1審原告の個性が表現されているものと認められるから,創作性があり,独立した著作物性があるものと認められる。同様に,本件写真の2羽のペンギンのうち,左側のペンギンのみを被写体とする部分は,著作物である本件写真の一部であるが,1審原告の個性が表現されているものと認められるから,創作性があり,独立した著作物性があるものと認められる。
しかるところ,前記1(2)ないし(4)の認定事実によれば,1審被告は,平成28年1月7日頃,1審原告が本件写真を画像データ化した原告画像をインターネットのウェブサイトからダウンロードし,同日頃には,原告画像の2羽のペンギンのうち,右側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理をし,原告画像に存在した原告氏名表示を削除した上で,当該画像データを本件サービスの被告アカウントのプロフィール画像として使用するためにアップロードし,同年2月18日頃には,原告画像の2羽のペンギンのうち,左側のペンギン及びその背景のみを切り出すトリミング処理をし,原告画像に存在した原告氏名表示を削除した上で,当該各画像データを本件サービスの被告アカウントのプロフィール画像として使用するためにアップロードし,これらのアップロードにより,被告各画像の画像データは,URLが付された状態でSmule社が使用する米国のサーバ内に格納されて,本件写真の一部が有形的に再製され,送信可能化されたものと認められるから,1審被告の上記各行為(行為1及び2)は,それぞれが,1審原告の有する本件写真の複製権及び公衆送信権の侵害に当たるとともに,1審原告の氏名表示権及び同一性保持権の侵害に当たるものと認められる。」
関連ページ:
■このページの著者:金原 正道