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学習塾のテキスト問題と解説(著作物)をライブ解説することが、原著作物の複製・翻案に当たらないとされた事例-ilc.gr.jp

学習塾のテキスト問題と解説(著作物)をライブ解説することが、原著作物の複製・翻案に当たらないとされた事例 |2019年11月28日


事件種別 侵害訴訟等控訴事件
権利種別 著作権
事件種類 著作権に基づく差止等
発明等の名称等 試験問題のライブ解説
事件番号 令和1(ネ)10043
部名 3部
裁判年月日 令和元年11月25日
判決結果 控訴棄却
原審裁判所名 東京地方裁判所
原審事件番号 平成30(ワ)16791
当事者
  控訴人:(株)日本入試センター
  被控訴人:(株)受験ドクター
主な争点 著作物性,翻案,編集著作権
全文(PDF)

第1 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人は,原判決別紙1-1ないし1-4記載の著作物を解説する原判決別紙2記載のライブ映像をウェブ上に流すこと及び将来同種のライブ映像をウェブ上に流す行為をしてはならない。
3 被控訴人は,控訴人に対し,1500万円及びこれに対する平成30年6月13日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。

第2 事案の概要等(略称は原判決のそれに従う。)
1 本件は,学習塾等の運営に当たって原判決別紙1-1及び1-2の各問題(本件問題)並びに同別紙1-3及び1-4の「解答と解説」と題する各解説(本件解説)を作成した控訴人が,控訴人とは別個に本件問題についての解説(被告ライブ解説)をインターネット上で動画配信した被控訴人に対し,①被控訴人が被告ライブ解説に際して本件問題及び本件解説を複製して利用することによって控訴人の複製権を侵害した旨主張し,また,②被告ライブ解説は本件問題及び本件解説の翻案であるから翻案権の侵害に当たる旨主張して,被告に対し,著作権法112条1項に基づき,上記動画等の配信の差止め及びその予防を求めるとともに,同法114条2項に基づき,損害賠償の一部請求として1500万円及びこれに対する不法行為の日以後である平成30年6月13日(訴状送達の日の翌日)から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求める事案である。
原審は,控訴人の請求をいずれも棄却する原判決をした。控訴人がこれを不服として控訴した。

2 前提事実及び争点は,原判決「事実及び理由」「第2 事案の概要」「2前提事実」(原判決2頁14行目から3頁5行目まで)及び「3 争点」(原判決3頁6行目から9行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

3 当事者の主張は,当審における控訴人の補充主張を次項のとおり付加するほか,原判決「事実及び理由」「第3 当事者の主張」(原判決3頁10行目から10頁6行目まで)に記載のとおりであるから,これを引用する。

⑴ 被控訴人は,本件問題又は本件解説の複製を行っているかについて
「控訴人は,被告ライブ解説に接する生徒たちがテストを受けてきたばかりであって問題文の記憶が鮮明に残っていること,生徒たちが本件問題及び本件解説を手元に置いて参照しながら視聴していることをも総合的に考察すべきである旨主張するが,被控訴人の手によって有形的な再製が行われていない以上,『複製』が行われたと認めることはできない。」


⑵ 被告ライブ解説は本件問題の翻案に当たるかについて
「本件問題は,控訴人自身も主張するとおり,題材となる作品の選択や,題材とされる文章のうち設問に取り上げる文又は箇所の選択,設問の内容,設問の配列・順序に作者の個性が現れた編集著作物であり,ここでは,このような素材の選択及び配列等に,その本質的特徴が現れているということができる。これに対し,被告ライブ解説は,作成された問題(すなわち,素材の選択及び配列等)を所与のものとして,これに対する解説,すなわち,問いかけられた問題に対する回答者の思考過程や思想内容を表現する言語の著作物であって,このような思考過程や思想内容の表現にその本質的特徴が現れているものである。
このように,編集著作物である本件問題と,言語の著作物である被告ライブ解説とでは,その本質的特徴を異にするといわざるを得ないのであるから,仮に,被告ライブ解説が,本件問題が取り上げた文を対象とし,本件問題が提起したのと同一の問題を,その配列・順序に従って解説しているものであるとしても,それは,あくまでも問題の解説をしているのであって,問題を再現ないし変形しているのではなく,したがって,本件問題の翻案には当たらないものといわざるを得ない。」

⑶ 被告ライブ解説は本件解説の翻案に当たるかについて
「しかしながら,読解対象文章及び設問・選択肢の文章を前提としていること自体からは,表現にわたらない内容の同一性がもたらされるにすぎないから,表現の本質的特徴の同一性の有無は,別途,文言等の共通性等を通じて判断されるべきものである。したがって,控訴人の上記主張は採用することができない。
また,控訴人は,本件ライブ解説の個々の箇所について,本件解説との間で表現上の本質的特徴の同一性を有する旨主張する。しかしながら,本件解説と被告ライブ解説とがいずれも本件問題に対する解説であることに由来して内容の類似性・同一性はみられ,被告ライブ解説は,その内容については部分的に本件解説と本質的特徴を同一にするといえるものの,その表現については,控訴人の主張を踏まえて検討しても,本件解説と本質的特徴を同一にするとは認められない。したがって,控訴人の主張は採用することができない。」


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■このページの著者:金原 正道

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