働き方改革を推進するための関係法律の施行(2021年4月)
働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成 30 年法律第 71 号)によって、いくつかの法改正がされ、施行されます。
今回の働き方改革の目的は、労働者がそれぞれの事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現することです。
働き方改革を総合的に推進するため、労働基準法、労働安全衛生法、パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法の各法律に、規定が整備されました。
長時間労働の是正など、労働時間に関する制度を見直し、 多様で柔軟な働き方の実現や、雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保等のための措置が確保されました。
特に、同一賃金、同一労働は、2020年4月に大企業には施行されましたが、2021年4月からは、中小企業に対しても施行されます。
国は、働き方改革についての基本的考え方を明らかにし、改革を総合的かつ継続的に推進するための基本方針を定めなければなりません 。
長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現等
労働時間に関する制度の見直し(労働基準法、労働安全衛生法)
時間外労働の上限について、月45 時間、年 360 時間を原則とします。
臨時的な特別な事情がある場合でも年 720 時間、単月 100 時間未満(休日労働含む)、複数月平均80 時間(休日労働含む)を限度に設定します。
※自動車運転業務、建設事業、医師等について、猶予期間を設けた上で規制を適用等の例外があります。
※研究開発業務について、医師の面接指導を設けた上で、適用除外。
月60 時間を超える時間外労働に係る割増賃金率( 50% 以上)について、中小企業への猶予措置が廃止されます。
また、使用者は、 10 日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、5日について、毎年、時季を指定して与えなければなりません。
高度プロフェッショナル制度の創設等を行います。
※高度プロフェッショナル制度における健康確保措置を強化
労働者の健康確保措置の実効性を確保する観点から、労働時間の状況を省令で定める方法により把握しなければなりません。 (労働安全衛生法)
勤務間インターバル制度の普及促進等(労働時間等設定改善法)
事業主は、前日の終業時刻と翌日の始業時刻の間に一定時間の休息の確保に努めなければなりません。
産業医・産業保健機能の強化(労働安全衛生法等)
事業者から、産業医に対し、その業務 を適切に行うために必要な情報を提供することとして、産業医・産業保健機能の強化を図ります。
雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保
不合理な待遇差を解消するための規定の整備(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
短時間・有期雇用労働者に関する、同一企業内における正規雇用労働者との不合理な待遇の禁止、いわゆる同一賃金・同一労働について、下記のようにされました。
それぞれの待遇ごとに、当該待遇の性質・目的に照らして適切と認められる事情 を考慮して判断されることが明確化されました。
また、有期雇用労働者の均等待遇規定が整備されました。
派遣労働者について、
・派遣先の労働者との均等・均衡待遇
・一定の要件を満たす労使協定による待遇
のいずれかを確保することを義務化しました。
これらの事項に関するガイドラインの根拠 規定が整備されました。
労働者に対する待遇に関する説明義務の強化(パートタイム労働法、労働契約法、労働者派遣法)
短時間労働者・有期雇用労働者・派遣労働者について、正規雇用労働者との待遇差の内容・理由等に関する説明が義務となりました 。
行政による履行確保措置及び裁判外紛争解決手続(行政ADR )の整備
上記の同一賃金・同一労働の義務や、待遇に関する説明義務について、行政による履行確保措置及び行政ADR を整備することとされています。
ADRとは、裁判によらない紛争解決処理のことをいいます。
「働き方改革」の実現に向けて(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000148322.html
働き方改革特設サイト(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/hatarakikata/
同一労働同一賃金特集ページ(厚生労働省)
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000144972.html
民事司法制度改革の骨子案
知財分野の解決迅速化など司法制度改革の骨子案 政府まとめる
2019年12月10日 6時45分
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191210/k10012208721000.html
との報道があります。
民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議は、司法制度改革からおよそ20年が経過し、様々な課題が見えてきた中で、新たな課題にも直面し、その対応を検討するために開催されているものです。
関係行政機関等の連携・協力のもと、民事司法制度改革に向けた喫緊の課題を整理して開催されており、2019年12月9日に、民事司法制度改革推進に関する関係府省庁連絡会議幹事会(第9回)が開かれました。
https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/minjikaikaku/
配布資料・取りまとめ骨子(案)(PDF)
「取りまとめ骨子(案)
第1 総論(国際化社会の一層の進展を見据えた民事司法の在り方)
1 社会の国際化が進展する中で,民事司法に求められるもの
・ 社会の国際化が進展し,これまで以上に国境を越える物,情報・サービスの流通(越境取引)が増加するとともに,日本国内への外国人の流入が増加する昨今にあっては,越境取引から生ずる紛争(越境紛争)が増加し,国内の民事紛争も外国人を当事者とするものが増加すること(国内民事紛争自体が国際化)が見込まれる。
・ 我が国としては,越境紛争において他国ではなく我が国の民事司法制度が利用されるよう,民事司法制度全般の国際競争力の強化を図るとともに,国際化社会に応じて国民や国内企業のみならず外国人からも利用しやすい民事司法制度を構築する必要がある。
2 民事司法の国際競争力という観点からみた検討の視点及び必要な改革
・ 民事訴訟につき,計画的かつ適正迅速な裁判の実現に向けて,裁判手続等のIT化を進めるとともに,これを契機に,民事訴訟手続の法制面や運用面における見直しを図る必要がある。
・ 特に国際的な紛争になりやすく,民事司法制度の国際競争に強くさらされる知的財産分野においては,紛争解決手段の更なる充実化を図り,紛争解決能力の強化を図る必要がある。
・ 国際商事紛争についていえば,その解決手段としてグローバルスタンダードとなっている国際仲裁を我が国において活性化する必要がある。
3 国際化社会において民事司法改革を検討するに当たって必要となるその他の視点
・ 近年,電子商取引の拡大に伴い,消費者が巻き込まれる越境紛争(越境消費者紛争)が急増しており,越境消費者紛争への対応力の強化も重要な課題である。
・ 国際化した国内民事紛争への対応力の強化についても,検討する必要がある。
第2 裁判IT化
1 裁判IT化の在り方
⑴ 国際競争力という観点からみた民事訴訟のIT化における検討の視点,課題及び方策
○ 全面オンライン化について
・ 国民の司法アクセスが後退しないよう配慮して,段階的に全面オンライン化を実現する。【法務省,最高裁】
○ 裁判IT化の迅速な検討について
・ 民事訴訟法等の必要な法改正のため,法制審への諮問を含めた速やかな検討・準備を実施する。【法務省】
・ 改正法に基づく新たな運用開始のため,システム開発等を含めた迅速な取組を期待する。【最高裁】
○ IT手続の利用促進策について
・ 全面オンライン化の実現の過程では,オンライン申立ての場合に,書面申立ての場合と比較して手続上のインセンティブを設ける等のIT手続の利用促進策を検討する。【法務省】
○ 民事訴訟法132条の10に基づく準備書面等のオンライン提出の先行実施について
・ 新たな法改正を待たず,民事訴訟法132条の10に基づき,準備書面等
の一定の書面についてのオンライン提出が先行実施されることを期待する。【最高裁】
○ IT化に伴う人的態勢整備について
・ 制度に応じてIT化に対応するのに必要な人的態勢が整備されることを期待する。【最高裁】
⑵ 民事訴訟のIT化に当たって必要な社会的基盤の整備
○ デジタル・ディバイドを踏まえた本人サポートの在り方について
・ 裁判所や法テラス等の公的機関はもとより,弁護士・司法書士や弁護士会・司法書士会をはじめとする士業者団体等,受け皿になり得る者において幅広くサポートを担当する。【法務省,最高裁,日弁連】
⑶ IT化の将来的な方向性とAIによる紛争解決手続へのサポートの可能性
○ IT化の将来的な方向性について
・ 民事訴訟のIT化に引き続き,保全・執行,倒産手続といった非訟手続についてもIT化を実現する。【法務省】
○ 判決情報の提供(公開)について
・ 民事判決情報を広く国民に提供することについて,司法府の判断を尊重した上で,ニーズやあい路等につき必要な検討を行う。【法務省,最高裁】
2 民事訴訟のIT化と同時に必要な改革
・ IT化の機会に,システムのIT化に留まらない適正かつ迅速な民事裁判の実現に向け,特別な訴訟手続など新たな制度の創設も含む法制面の検討を行うとともに,運用改善の取組がされることを期待する。【法務省,最高裁,日弁連】
第3 知財司法
1 二段階訴訟制度の導入について
・ 特許権侵害の有無のみを判断し,損害については判断せずに判決に至ることのメリットやあい路,利用者のニーズ等を踏まえ,引き続き検討を進める。【内閣府(知財事務局),法務省,特許庁】
2 損害賠償の見直しについて(懲罰的損害賠償・利益吐き出し請求権)
・ 特許権侵害者の元に利益をとどめない等,被侵害者の保護や侵害の抑止に資するための損害賠償制度のニーズやあい路,現状の損害賠償制度との整合性等を踏まえ,引き続き検討を進める。【内閣府(知財事務局),法務省,特許庁】
3 アミカスブリーフの導入について
・ 審理中の知的財産権関係事件に関し,裁判所が当事者以外の者に意見の提出を求めることのメリットや運用上の工夫例,あい路等を踏まえ,引き続き検討を進める。【内閣府(知財事務局),法務省,特許庁】
4 アトーニーズ・アイズ・オンリーの導入について
・ 知的財産権関係事件の証拠等に営業秘密が含まれる場合に,その開示先を相手方訴訟代理人に限ることのメリットやニーズ,あい路等を踏まえ,引き続き検討を進める。【内閣府(知財事務局),法務省,特許庁】
5 弁護士費用に関する敗訴者負担の導入について
・ 知的財産権関係事件に関し,勝訴当事者の弁護士費用を敗訴当事者に負担させることのメリットやニーズ,あい路等を踏まえ,引き続き検討を進める。【内閣府(知財事務局),法務省,特許庁】
6 知財調停の活用・充実について
・ 当事者の管轄合意なく地裁に調停申立てを可能とするための規律の見直しについて,実務の運用状況等を注視しつつ,引き続き前向きに検討する。【内閣府(知財事務局),法務省】
・ 知財調停の運用開始を歓迎する。知財調停利用者のニーズを踏まえ,知財調停の手続モデルの拡充を期待する。【最高裁】
7 知財高裁の大合議制度の拡大について
・ 知財高裁での5名の裁判官による審理・裁判(大合議)について,著作権・意匠・商標関係の事件等,現状より対象範囲を拡大するための規律の見直しについて,実務の動向等を注視しつつ,引き続き前向きに検討する。【内閣府(知財事務局),法務省,文化庁,特許庁】
第4 国際仲裁
1 基盤整備の取組継続の必要性
・ (一社)日本国際紛争解決センターが虎ノ門に設置する専用施設も活用しつつ,人材育成・周知啓発(国内外)の取組を継続する。人材育成については,学生の参加できる模擬仲裁等の取組に講師派遣等の必要な支援を実施する。【法務省,外務省,経済産業省】
2 仲裁関連法整備の必要性
・ 外弁法の改正は急務である。仲裁法についても,国際商事仲裁モデル法が一部改正されていることも踏まえ,仲裁手続に裁判所が関与する場合の手続に関する規律の見直しを含め,国際仲裁の活性化に資する関連法制度の見直しについて,引き続き前向きに検討する。【法務省】
第5 国際化社会の進展に伴って必要とされるその他の方策
1 越境消費者紛争への対応力を強化するための方策
⑴ 越境消費者紛争の現状と特徴及びその課題
・ 近年,電子商取引の拡大に伴い,越境消費者紛争が急増しているが,越境消費者紛争は,係争額が少額であることが多く,時間・コストといった観点から,訴訟による解決が期待し難い場面が多い。国民生活センター越境消費者センター(CCJ)もそのうち一定程度は解決しているが,必ずしも態勢として十分とはいい難い。
⑵ 越境消費者紛争を効果的に解決するための対応策
○ 越境消費者センター(CCJ)を含む国民生活センター及び消費者庁の態勢強化について
・ CCJの態勢を強化(語学力のある相談員や職員の増員等の人的態勢の質及び量の強化,海外機関との連携強化,あっせん機能の強化等)するとともに,地方公共団体との情報共有等を強化し,全国の消費生活センターの中核機関としての機能を強化する。併せて,海外の法制度についての調査・研究を実施する。国民生活センター紛争解決委員会においても越境消費者紛争に対応できるような態勢構築に向けた検討を実施する。【消費者庁】
○ ODRの導入に向けた検討について
・ ODRを含めた新たな紛争解決のための態勢構築等に向けた検討を実施する。【内閣官房(経済再生事務局),消費者庁】
○ その他
・ 未然に紛争を防ぐための消費者教育及び紛争発生後に適切な対処(CCJ等へのアクセス)ができるようにするための消費者啓発を実施する。【消費者庁】
2 国内民事紛争の国際化への対応力を強化するための方策
⑴ 国内民事紛争の国際化を見据えた対応の必要性
・ 国内民事紛争の国際化への対応を図ることは,国民と外国人の双方が尊重し合える共生社会を実現する前提というべきであり,在留外国人の国内民事紛争に関する司法アクセスを確保するという視点に基づき,対応策を検討しておく必要がある。
⑵ 在留外国人の国内民事紛争に関する司法アクセスを確保するための対応策
○ 関係機関の連携強化について
・ 民事紛争を有する在留外国人に適切に司法サービスを提供すべく,一元的相談窓口における法テラス指定相談場所の指定の活用など,関係機関(一元的相談窓口,法テラス,消費生活相談窓口,裁判所,弁護士会を含む。)の連携強化を図る。【消費者庁,法務省,最高裁,日弁連】
○ 関係機関における多言語対応の充実について
・ 在留外国人向け相談窓口に関する情報の周知・広報を強化し,関係機関での対応言語を拡充するとともに,法テラスの人的態勢の強化,法廷通訳の質の確保,対応可能な弁護士の育成等を図る。【消費者庁,法務省,最高裁,日弁連】
○ 民事法律扶助に関する援助要件,援助対象及び費用負担について
・ 在留資格のない外国人等に対する援助や外国人の行政手続に関する援助は,法テラスにおいて,日弁連委託援助業務として行っているところ,これを進んで民事法律扶助の対象に含めることや,外国人に対する民事法律扶助について国費を給付する制度とすることは,課題が多く難しい。在留外国人
に対する司法アクセスの確保のためには,関係機関との連携強化や多言語対応の充実を優先して実施すべきである。
3 その他の民事司法の国際化に関する方策
⑴ インターネットを通じた外国語による日本法令に関する情報の発信
・ 日本法令の外国語訳につき,より利用者本位のサービスを実施する観点から,翻訳整備の加速・充実化(AIの活用を含む)や専用ホームページの機能向上・充実化など,サービス内容の抜本改善を速やかに実施する。【法務省】
⑵ 日本貿易振興機構と弁護士会との連携強化
・ 現在,日本国内外で行っている海外展開を目指す中小企業への国際法務相談に関する支援業務(日弁連の中小企業海外展開支援弁護士制度の案内を含む。)につき,ニーズ等を踏まえながら,一層の充実化に向けて検討する。【経済産業省】」
著作権法改正の平成30年12月30日施行について
平成30年12月30日施行 環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)の発効に伴う著作権法改正の施行について 文化庁
平成30年10月31日,我が国を含む6か国が国内手続を完了し,協定の寄託国であるニュージーランドに対し通報を行ったことから,同年12月30日に環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(TPP11協定)が発効することとなりました。これにより,著作物等の保護期間の延長等を含めた著作権法改正が平成30年12月30日から施行されることとなりました。
※TPP11整備法による改正後のTPP12整備法(著作権法関係部分)
環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律による著作権法改正の概要(159.7KB)
環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(抄)条文(103.8KB)
環太平洋パートナーシップ協定の締結及び環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定の締結に伴う関係法律の整備に関する法律(抄)新旧対照表(150.9KB)
「問2 保護期間はどのように計算しますか。」
「計算方法を簡単にするため,すべての期間は,死亡,公表,創作した年の「翌年の1月1日」から起算します(第57条)。」
「問3 TPP11協定の発効日が平成30年12月30日となったことにより,著作物等の保護期間はどのように変わりますか。」
「TPP11協定の発効日が平成30(2018)年12月30日となったことにより,著作物等の保護期間の延長を含めた著作権法改正が同日から施行されることとなり,原則として昭和43年(1968年)以降に亡くなった方の著作物の保護期間が延長されることとなります。具体的には,昭和43年(1968年)に亡くなった方の著作物の保護期間(原則)は平成30(2018)年12月31日まででしたが,平成30(2018)年12月30日付けで著作者の死後50年から70年に延長されることになり,20年長く著作物が保護されることとなります。」
「問4 既に保護期間が切れている著作物等の保護期間はどのようになりますか。」
「著作権法においては,一度保護が切れた著作物等については,その保護を後になって復活させるという措置は採らないという原則があるため,改正法の施行日である平成30(2018)年12月30日の前日において著作権等が消滅していない著作物等についてのみ保護期間が延長されます(TPP整備法附則第7条)。したがって,既に保護期間が切れているものについては,遡って保護期間が延長されるわけではありません。」